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地域活性の取り組み

宿泊施設や観光施設などが申請主体者となって企画申請するにあたり、採択につながるポイントを解説!

令和6年度 観光庁『地域観光”新発見”事業』(公募期間:令和6年3月8日〜4月17日12時)

前回に引き続き、全国各地にて観光庁の公募事業に携わっている立場から解説していきたい。申請に必要な様式は6点。先ずは、下記のリンク先から公募要領や申請様式をダウンロードした上で、併せてご覧いただきたい。

事業効果を向上する実施体制について

『地域観光”新発見”事業』の特設サイトはこちら


本文では、様式1を主に解説していく。

様式1(事業計画書)

①基本情報・実施体制等

・申請種別:

事業期間内にコンテンツを造成し事業期間後に販売するのであれば「類型1」を、事業期間内に販売できるのであれば「類型2」をそれぞれ選択。尚、事業期間内に販売する収益にて自己負担分は最低限回収することを目的に「類型2」にて企画提出することをお勧めしている。

・テーマ分類:

従来の観光スポットでのコンテンツではなく、地域特有の基幹産業や文化財など異業種との掛け合わせ、従来は使用されていない時間帯や特別公開など”新しい取組によるコンテンツ造成”とすべく、複数選択したい。

・連携する市町村:従来所管されている観光部署のみならず、“異業種連携”を推進する上で各該当する所管部署を追記したい。例として、農業体験コンテンツであれば農業振興、酒蔵やものづくり事業者などの伝統産業との体験であれば商工や産業振興、文化財活用であれば文化財保全や教育委員会といった部署である。その上で、本事業を通じて他事業者に波及する取り組みとすることで、その地域ならではの産業体験を面で展開し、滞在時間の延長や宿泊促進、観光消費の増大につなげることが期待できる。

・連携先:

観光協会や旅館協同組合、商工会議所・商工会、JAなどの各業界団体についても市町村同様に面的な波及を担う役割を期待したい。また、個別事業者や大学等の教育機関、旅行商品を販売するエージェント、プロモーション先などにおいても具体的な連携や委託内容を役割欄に記載し、一体的に事業を推進したい。尚、事業効果の向上や取組自体の域内での認知度向上を図る上でも、少なくとも10以上の連携先を挙げたいところである。

②これまでの実績等

観光庁ならびに他省庁の採択事業の実績や課題を掲出すると共に、本事業にて新たに取り組む点や課題解決点を記載。また、過去の事業にて採択されている場合には、前事業にて造成や販売が完結した場合を除いては、全く異なる取り組みよりもターゲット層の拡充や転換、連携先の追加による面的なコンテンツと周遊先の拡充による滞在時間の延長、夜間や早朝に実施するナイトエコノミーコンテンツによる宿泊促進、高付加価値化による客単価の向上、面的な観光消費の拡大などの追加の取り組みの方が望ましく、地域全体にて持続的に取り組む姿勢を打ち出したい。

「稼ぐ観光商品化」と「ビジネスエコシステム」の構築について

③事業内容

・ターゲット等および造成する観光コンテンツの具体的内容:

具体的な層やペルソナ(人物像)を描きたい。なぜ!?その体験コンテンツが好まれるのかを客観的な理由を添えて記述。尚、一過性のファンはリピーターにはなりにくいため、マニアやスポーツ等の選手、体験先産業に関わる人などをターゲットとして、探究心を醸成するコンテンツを造成したい。造成にあたっては、観光スポットの見学や買い物などの“モノ消費コンテンツ”ではなく、体験型の“コト消費”、更にターゲット層にとっては対価を払う意味(意義)が生まれる特別な体験型の“イミ消費”が望ましい。また、コンテンツを提供する側が全て造成し切るのではなく、観光客自らが造成過程に参画できる“プロセスエコノミー型のコンテンツ”が最も有益だと考えている。例として、アウトドアアクティビティのコース造成などが挙げられるが、体験者にとって自らが造成に関わったコースとの思い入れが生じることとなり、造成後において一参加者として来訪する割合が高くなる。造成に

・販売開拓計画および効果的な販売促進・情報発信計画:

自社の公式サイトや連携する施設につき。本事業を通じてターゲット国の言語対応は整備したい。また、地図検索・予約検索への情報掲載、OTAへの掲載やキャッシュレス対応化も推進。国内外の旅行業者はターゲット国に強いところと組むべく、海外商談会等に参画されている市町村や都道府県の担当者にヒアリングの上、共同PRを計画。尚、本事業の中でコンテンツタリフを作成した後に旅行業者との個別商談会が開催されるので、是非とも参加し販路を拡げていただきたい。誘客プロモーションにおいては、事業者単体の努力や資金では限界があるため、連携先と一体的に発信していくことが肝要になる。

海外のシェフをターゲットにした生産者との茶摘体験(イメージ)

⑤事業の目標(KGI、KSF、KPI)、⑥事業の将来性

民間事業者の事業計画と同様に、事業単体において“稼ぐ観光商品”にしなければ意味がない。補助金に依存した赤字の商品では、必然的に次年度以降に継続しなくなる。

また、申請主体者の宿泊客や飲食客だけが伸びれば良いという事業でないことに留意したい。今回の自己負担金は、観光まちづくりという地域に対する“投資”であると考えたい。新たなターゲットの誘客や地域全体の観光消費を創出することで、地域全体での更なる合意形成が図られ持続可能な取り組みに発展できる。次年度以降の誘客プロモーションにあたり、一事業者が奮闘するよりも地域全体で行う方が遥かに来訪者数を増大できる。その上で、自己資金や補助金に頼らなくとも連携先を含めた収益全体の中から資金を捻出する循環を育みたい。ひいては、自身の施設等にも永続的に誘客し収益向上につながる「ビジネスエコシステム」を構築できるからである。

おもてなしstation’s Letter

様式2(費用積算書)

事業期間内に販売し収益を見込む計画につき、「体験料」や「ガイド料」など実利用(購入)客数に応じて可変する経費については、KPIに対して実数が少なかった場合に総事業費が最低事業費を下回ることのない様にリスク管理を行いたい。尚、体験提供先や有償ガイドへ実費を還元できるため「補助対象外経費」に計上することをお勧めしている。その分、高付加価値化に向けたコンテンツ造成に係る経費やガイド養成に係る研修会運営費を「補助対象経費」の中で賄える。

様式3(事業実施スケジュール)、様式5・6(市町村・連携先からの同意書)

よく聞く話として、採択された後にキックオフミーティングを開かれる地域がある。連携先の中から『初めて計画の全容を把握した』といった声が挙がらない様に、今回の計画申請時から綿密に打ち合わせを行い役割分担を明確にした上で、同意書をいただきたい。また、事業スタートにて躓かない様に「いつからいつまでに誰が何を担当するのか」を細かくタスク分類し記載することで、地域全体にてイメージを共有できる。

様式4(事業概要書)のブランクフォーマット

様式4(事業概要書)

様式1〜3の中から最重要項目が1枚のパワーポイントに集約されており、審査員が最初に閲覧し評価する書類である。また、イメージを訴求できる画像を貼付できる唯一の書類でもあることから、審査員にインパクトを与える事業概要書を作成したい。


最後に、申請にあたっては、様式4〜6を除いては管理画面からそれぞれ入力することとなる。一部の項目には文字数制限があることから事前に確認の上、様式1〜3を作成することをお勧めしたい。

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